ちくま歴史講義シリーズの端緒「昭和史講義」の貴重さを徹底解説!

本記事では、筒井清忠編「昭和史講義-最新研究で見る戦争への道」(ちくま新書 2015)を取り上げます。

昭和史について皆さんはどのくらいのことを知っていますか?
なかなか理解したり、議論するのが難しい時代です。
この難題に真正面から取り組み、解説しているのが本作です。

その貴重な作品の魅力について、お伝えしたいと思います。

難しい戦前昭和史が分かる稀有な本

昭和の歴史、とりわけ戦前の歴史について、詳しいことを知ろうとしても適当な本を探すのは想像以上に大変なことです。

世の中には、この時代に関する著作があふれ、しかもその大半が特定の政治的党派によっているからです。

その中で、本作は党派的思考によらず、最新の研究成果を交えて、客観的に戦争へと至る政治の過程を明らかにした稀有な歴史本といえるでしょう。

本書で最新の歴史研究の成果を知ることができる

本作では、ワシントン体制が成立し、幣原協調外交が行われた大正時代の終わり頃から、昭和20年のポツダム宣言受諾に至るまでの政治の動きが、15章に分けて叙述されます。
しかも、各章を担当しているのは、その時期を専門とする研究者たちであり、その最新の成果を知ることができます。

例えば、
2.26事件において、石原莞爾は反乱軍に対してどのような態度をとったのか?
ハル・ノートが出された経緯と列国の思惑はどうであったのか?
日本軍による真珠湾攻撃をアメリカは知っていたのか?
など
様々な論点が、最新の資料をもとにした実証的研究によって明らかにされていくのです。

それぞれの章の最後に、さらに詳しく知りたい読者に向けて、参考文献が示されていることも、この本の学問的性格を特徴付けています。

またその時代の善悪というものを断ずることを避け、読者に自由な判断を委ねるというスタンスで本作は貫かれています。

本書は昭和史理解のために必読!

それでは、本作に対する評価はどうなっているのでしょうか?

まず、歴史学がサイエンスであるということの意識を根底に、徹底した実証主義の立場をとっていることについては、肯定的な意見が多いです。

「このシリーズを読まずして、昭和史を語る事はできない。」
「信頼できる。これは間違いない。」
「今最も必要なのは、歴史を単一の論理に還元する左右のイデオロギーから自由であり、信頼に足る実証史学の成果を踏まえながらも、一般読者が容易にアクセスできる手軽さを備えた本書のような書物だ。」

など、本書の学術書的性格は肯定的に受け入れられています。

自己の政治的主張を通すために、歴史を都合の良いように解釈した書物が世の中にあふれていることへの警告として本書は書かれるに至ったのですが、その目的をおおむね達成しているといえるでしょう。

歴史に自信のない方も昭和史学習のきっかけにオススメ

また、昭和史全体に興味があるわけではなく、例えば、2.26事件や日米開戦など特定の事件のみを拾い読みしている方もいるようです。
自分に興味のある所から読んで、知識を広げていくという読み方もありなのです。

一方で、専門家たちが書き、新書という形式ゆえに紙面も限られていることから、基本的な歴史知識については知っているのが当然のこととして説明は省略されています。

そのためか、とりあえず高校の日本史の教科書などで基本的知識をつけてから本書にとりかかってこそ、その価値が本当にわかるという意見もあります。
とりあえず本書を少し読んでみて、難しすぎると思ったならば、高校レベルの解説書に立ち戻り、理解して読み進める、という臨機応変さが読者には求められるのも知れません。

全ての人のために書かれた本

なぜ、大正デモクラシーは軍部独裁へと変貌していったのか?
協調外交はなぜ挫折し、戦争への道を歩むことになったのか?
こうした疑問を抱いている方に本書は正確な事実を提示し、さらには自分で考える機会を与えてくれるものです。

まず一義的には、昭和史に多少なりとも興味を持っている方にこの本は最適でしょう。
それでは、歴史に興味のない人にはこの本は向いていないかといえば、そのようなことはありません。

歴史に真摯に向き合う本書のスタンスは、必ずや歴史にあまり触れることのなかった人々をも感動させるでしょう。
その意味では、すべての人に向けてこの本は書かれているのです。

本書はちくま歴史講義シリーズの端緒!

本書は、ちくま新書の歴史講義シリーズの一番最初に出版されたものです。
逆に言うならば、この本が好評だったからこそ、このようなシリーズが企画されたのです。

現在では、旧石器・縄文時代~古墳時代を扱う「考古学講義」からつい最近の「平成史講義」までほとんどの時代をカバーするシリーズとなっています。
(ただし、なぜか江戸時代についてはまだ何も出ていませんのでご注意を!)

より深く知りたい人のために

「昭和史講義」もご紹介しているものだけでなく、より内容が専門化した「昭和史講義2」、歴代の首相の動向から戦争への道を考察した「昭和史講義3」が出ており、様々な昭和史へのアプローチが試みられています。

より深く昭和、とりわけ戦前のことを知りたくなった読者には、さらなる探求の道が開かれていますし、この際、他の時代についても知りたくなったという方にも歴史講義シリーズは
十分に対応する読み応えのある作品群です。

最後に

昭和という時代も遠くなり、戦争について語られることが少なくなっていくことも危惧されています。
再び戦争の惨禍に覆われることがないように、本を通してでも我々は戦前期について学ばなければなりません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました